「これがあの漢方薬になるのか!」薬草園はリアルな実感の宝庫①

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本草薬膳学院の通信課程で勉強しながら、月に一度、京都府の薬膳インストラクター養成講座へ通っているKYOです。先日、薬膳インストラクターの授業で薬草園へ行ってきました!その時の様子をレポートでお伝えしたいと思います。

KYO
今回レポが長いので、数回に分けてお届けします!

住宅地の中にある薬草園

私が現在通っている「薬膳インストラクター養成初級講座」は、月に一度、授業が行われます。いつもは理論か実習のどちらかなのですが、年に一度だけ、薬草園現地実習会というものがあります。

場所は、京都市山科区。日本新薬株式会社の山科植物資料館(ハーブの館)です。もともとは日本新薬の栽培試験場としてスタートした歴史がありますが、現在は約80年の間に世界各地から収集した3000種以上もの薬用・有用植物が見られる薬草園となっています。

実は私、割と近くに住んでいるのです。けれど、こちらの存在を全く知りませんでした!もちろん訪れるのは初めて。事前に予約すれば一般の方でも見学できるそうです。

http://www.nippon-shinyaku.co.jp/herb/

当日は京都地下鉄東西線、椥辻駅に集合。←なぎつじと読みます。

この辺り周辺に、なぎの木がたくさん生えていたのでこの名になったとか。ちなみに薬草園にて教わったのですが、椥の葉には横に葉脈がないので、切れにくいという特徴があります。「縁が切れない」にかけて、縁結びの葉とされているそう。また凪(風がない状態)にもつながることから、航海安全のお守りにもされるのだとか。

これが椥の木。実もついていました。

椥辻の駅から住宅地の中を歩いて向かいます。しばらく歩いて行くと、突如として現れた薬草園。こんなところに薬草園があったのか〜!とただただ驚き。そしてどこかレトロなセミナールームへ向かいます。

中で、資料と絵葉書を手渡されました。

リアルな植物の写真がコラージュされたアート作品。

↑多彩な植物で埋め尽くされた絵葉書。よ〜く見ると、写真のような、絵のような。実はこれ、ひとつひとつ植物をスキャンし、それを合成して作られているのだとか!壁にはハガキの元である作品が飾られていました。すごい迫力!ちょっと怖くなるぐらいの迫力です。

まずはセミナールームでの講義です。薬の歴史から始まり、日本新薬発展のきっかけとなった回虫駆除薬サントニンについてまで、さまざまなことを教えていただきました。

そして、午後からお待ちかねの薬草園見学。数グループに分かれて別コースで見学します。一つのグループにつき、先生が1名がついて解説してくださいます。

青パパイヤ

青パパイヤ

私のグループはまず温室からスタート。青いパパイヤがお出迎え。「青いパパイヤの香り」っていう映画、ありましたね。青パパイヤは野菜として食べますが、熟せばフルーツです。

オールスパイス

オールスパイスの木

オールスパイスの木。果実を香辛料に用いるのですが、ひとつでシナモン、ナツメグ、クローブの香りがするのでオールスパイスというのだそうです知らなかった。

こちらは、藿香(カッコウ)梅雨の時期の重だるい症状に効く「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」の藿香です。画数が多いせいか物々しいイメージでしたが、まったく違ってシソの葉のような。紫の花が咲きます。

ニクズク〈肉荳蔲〉

ニクズクの木

出ました、肉荳蔲(ニクズク)。中国語で書くと「なにそれ?」ですが、英語ではおなじみナツメグです。コウトウニクズクも、ニクズクと同じように種子を食用にします。

ワサビノキ

ワサビノキ

ワサビノキ。スーパーフードとしていま流行っている、モリンガです。葉などに栄養たっぷりで、奇跡の木と呼ばれているそうな…。でも見たときは葉がなく、さっぱりした状態でした。笑

トンキンニッケイ〈桂皮〉

トンキンニッケイ

ニッケイ

ニッケイは、おなじみシナモンですね。生薬名は「桂皮」です。シナモンはトンキンニッケイなら樹皮から取れるのですが、日本のシナモンは香りが弱いため、根皮からしか取れないそうです。

コブミカン

コブミカン

コブミカンの木。タイ料理がお好きな人ならご存知かも。グリーンカレーなどに入っている「バイマックルー」という葉です。果実、葉を香辛料にします。果皮は髪の油、頭痛、腹痛に用います。私、この葉っぱの香りが大好きです。

コショウ〈胡椒〉

コショウ

こちらは、コショウです。実は、緑こしょう、黒こしょう、白こしょうはすべて同じ木から取れるって知ってました?

  • 緑こしょう…未熟な実を塩漬けにして加工したもの
  • 黒こしょう…未熟な実を収穫した乾燥させたもの
  • 白こしょう…完熟したこしょうを収穫して皮を取り除いたもの

ちなみに、レッドペッパーだけは別の品種なので、同じ木からは採れないのだそう。

ハス〈蓮〉

ハス。すいれんです。花の美しさに目をひかれますが、れんこんも、花が咲いた後にできる蓮の実も、葉も「そんなに体に良かったの!?」と、薬膳では大活躍食材のひとつです。種実は「蓮子」や「蓮肉」と呼ばれて、生薬にもなります。リラックス効果が高いので、イライラや、眠れない時などにマル。

蓮の実

ちなみに、ベトナムでは蓮をたくさん食べるそうで、昔ベトナムを旅行したときに、蓮の葉茶や蓮の実のお菓子をたくさん食べた記憶があります。特に蓮の実はおいしくて止まらなかった覚えが。いつかまた行ったら買いたいな。

サンザシ〈山査子〉

山査子

山査子(サンザシ)です。薬膳や中医学を勉強している人なら一度は目にするメジャーな生薬。漢方薬になってしまうと、元の姿がまったくわからないですが、こんな可愛い形をしてるんですね。観賞用としてお庭に植えたい感じ。
ちなみに、山査子は肉類の食べ過ぎ、油ものの消化を助けてくれる心強い生薬。漢方のプロたちは、飲み会の際、必ず山査子の入った漢方「晶三仙」を持ち歩いているんだとか。ずるい!笑

インヨウカク〈淫羊藿〉

淫羊藿

淫羊藿(インヨウカク)です。見た目の普通さに、驚きました。というのも、淫羊藿ってすごくセクシーな漢字じゃないですか?セクシーイメージが強すぎて、見た目がただの草っぽいので、ギャップにびっくり。笑 名前の由来は、これを食べた羊が連続100回頑張れたから…とのこと。うーん。薬効にも「強壮、強精」の文字が踊っております。助陽の働きが強いんですね。神経衰弱、健忘症にも利用されます。

山梔子

山梔子(サンシシ)は、くちなしです。生薬として利用する果実が「口がないように見える」のでこの名前になったとか。昔は衣類の染料や、たくあんなどの色付けにも使われたそう。お正月の栗きんとんの色付けとしてもおなじみですね。古代の「神農本草経」には「主臓を治し皮膚の病を治療する」とあります。そういえば、昔うちの庭にもくちなしがあったんですよね。花はキレイでいい香りなんですけど、ものすごい巨大な青虫がよくついていた覚えが。

ホホバの木

ホホバの木

生薬ではありませんが、ホホバの木もありました。エッセンシャルオイルでおなじみ。私も愛用しています。ベタベタしにくくて、肌にスッとなじむオイルなんですよね。種子から得られるオイルは鯨油に似た成分を持ち、酸化しにくいのが特徴です。

ヘントウ〈扁桃〉

扁桃の木と実

扁桃の種子

扁桃(ヘントウ)、アーモンドです。小さめのキウイのような果実の中に、1粒のアーモンド(仁)が入っています。1個の種子にたった1個、だからいいお値段なのだとか…。ちなみに、扁桃という名前は、扁桃腺に似てるからとのこと。

ダイダイ〈橙〉

だいだい

橙々(ダイダイ)です。お正月の鏡餅の上にのせるのは、みかんではなく、ダイダイが正しいそうです。というのも、ダイダイは、去年の実と今年の実が同時に木になるのが特徴。今年の実がまだ小さい時には、一昨年の実もまだなっています。一つの木に3代の実がなることから、「家が代々続くように」と願いを込めてダイダイを鏡餅の上にのせるんだそうです。ただ、最近はほとんどみかんですが。

生薬では、ダイダイの未熟果実は枳実(キジツ)、成熟果皮を橙皮(トウヒ)と呼びます。どちらも胃腸の調子をととのえたり、痰を取るなどに用います。

温州みかん

みかん

こちらは温州みかん。日本原産(鹿児島県長島が起源とされる)です。みかんの皮は、おなじみ「陳皮(ちんぴ)」。成熟した果皮が「陳皮」で、未熟果皮は「青皮」。ああ、ややこしい…。陳皮は、気分をすっきりさせたり胃腸の調子をととのえたりする働きがあり、いろいろな漢方薬に使われる生薬です。
南東北医療クリニック漢方外来、関先生の研究で、有効成分の多い陳皮がアルツハイマー病の治療に有効かもしれないと、臨床実験をすすめているそうです。

とりあえず、今日はここまで。漢方でよく聞く植物が「こんな姿だったんだ〜」と感動したり、はたまたよく知っている草木が「えっ!そんな効能があるの?」と驚いたり。後半戦に続きます!

KYO
まだまだ漢方で使われる植物を見てきましたので、ぜひ後半をお楽しみに!


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