「これがあの漢方薬になるのか!」薬草園はリアルな実感の宝庫②

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本草薬膳学院の通信課程で勉強しながら、月に一度、京都府の薬膳インストラクター養成講座へ通っているKYOです。前回、薬草園へ行ってきたことを書きましたが、今回はその続きです!

↓前回の記事はこちら。

「これがあの漢方薬になるのか!」薬草園はリアルな実感の宝庫①
初めての薬草園へ行ってきました。イメージのわきにくい漢方薬の元となる薬草など、写真つきでご紹介します。
KYO
薬草園の先生にいろいろと
教えてもらったのですが
とても面白かったです!

漢方薬、薬品になる植物がいっぱい

薬草園ではさまざまな植物を見ましたが、何しろ薬草園に生えている植物は3000種以上。ささっと見ただけでも、大変な量でした。今回は、漢方薬に入っている植物もたくさん出て来ますよ〜。

トウシキミ〈八角〉

八角の実。文字通り八角です。

さてさて後半の一発目は、唐樒(トウシキミ)です。生薬名は八角、または大茴香といいます。中華料理でおなじみのスパイス「八角」です。(木の写真を撮るのを忘れてしまいました…)

八角は、中国ではメジャーな調味料。生薬としては腎を温め、冷え、むくみ、腹痛、生理痛、足腰の痛みなどの治療に用います。

それ以外にも驚きの使い道が。八角はタミフルの原料になるって、知ってました?タミフルといえばインフルエンザの薬として有名。八角に含まれる「シキミ酸」という有効成分だけを抽出し、タミフルが合成されます。タミフルが流行った2010年ごろには、製薬会社が買い占めたせいで中国のスパイス市場から八角が消えたとか…。ただし現在は化学合成で作られているそうです。

シキミ

八角が採れるトウシキミの木は、日本には自生していません。でも日本には、八角そっくりの実ができる「シキミ」という木があります。そして厄介なことに、日本のシキミの種には毒性が。

八角にそっくりなシキミの実

シキミの若い実

昔、ドイツから中国へ八角を買い付けに来たある業者が、日本にも立ち寄り、日本のシキミを八角と間違えて持って帰ってしまったとか。八角に混入して市場に出回ってしまったシキミ。中毒者や死者が出てしまい、国際問題にまで発展したことがあるそうです。

シキミの花の写真

ところで、シキミといえば、日本では古くから仏前の供花としておなじみ。墓参りにも持って行きますよね。なぜシキミを仏事に使うのか?というと、シキミの花がインドの青蓮花(しょうれんげ)に似ているからという説がひとつ。また、においが強く有毒であるシキミをお墓の周りに植え、野犬などに荒らされることから守ったこと、シキミの独特な香りで臭いを消したからなどの理由があるようです。
ちなみに、シキミの果実は牛や馬の寄生虫の駆除などに使われます。毒性がかなり強いので子どもなどに触らせないように要注意。それにしても八角とシキミ、本当にそっくりです。

クコ〈枸杞子〉〈地骨皮〉

クコの実

クコの木

薬膳といえばこれ!というぐらいおなじみ、枸杞(クコ)です。シナシナに乾いた状態しか見たことがありませんでしたが、真っ赤な実がとっても可愛い!果実を強壮に用います。生薬名「枸杞子」。気や血を補って生命力アップ、アンチエイジングにぴったり。

根皮は「地骨皮(ジコッピ)」という別の生薬になり、解熱や降圧に用います。血行をよくする成分ベタインが含まれています。

葉もお茶として利用されます。中国の薬物書の古典「神農本草経」には「久しく服すると筋骨をしっかりさせ、身を軽くし老いない」と強壮薬であることが書かれています。

トウキ〈当帰〉

トウキの葉

当帰(トウキ)です。当帰といえば婦人系の薬にはよく入っているので、女性は割と聞き馴染みがある生薬かもしれません。当帰は根を強壮、鎮痛、鎮静に用います。葉っぱを匂いでみると…ある野菜の匂いが。セロリです。当帰もセロリも同じセリ科だからでしょうか。

ちなみにスー○ー銭湯の薬湯には当帰が使われているそうで、「においでわかる」と先生がおっしゃっていました!浴用にも良いんですね。

オケラ〈白朮〉

白朮の花が枯れた後

オケラの花の写真

オケラは、古くから利用されてきた薬草。生薬名は「白朮(ビャクジュツ)」。疲れやむくみ治療によく使われます。胃腸の働きをよくすることで体内の水はけをよくするイメージです。

また、白朮はお正月のお屠蘇の材料にもなります。お屠蘇は、生薬を配合した薬酒。処方には様々ありますが、最近のものには白朮や桔梗、山椒、桂皮などが含まれることが多いようです。

八坂神社

京都では、大晦日に八坂神社を参拝し、わらに御神火を移して持ち帰る「おけら詣り」が有名です。元日の午前5時から行われる新年最初の祭典「白朮祭」では、乾燥させた白朮の根などに御神火を点じる儀式が行われます。

おけら詣りはとっても有名ですが、薬草の白朮・オケラが関係しているから…とは、京都人でもなかなか知らないのではないでしょうか。

ハンゲ〈半夏〉

ハンゲ

半夏(ハンゲ)です。痰を取る、吐き気をおさめるなどのほか、消化薬としても使われます。小青龍湯、半夏厚朴湯、六君子湯など多くの漢方処方に配合されています。

使われるのは根茎の部分。ころんとして、団子のような、おヘソのような(?)形をしています。

半夏は昔からどこにでも生えている草だったため、農作業を終えたおかみさんが、帰り道に半夏の根を取って小遣い稼ぎにしたことから「へそくり」という名前になったとか!

ナツメ〈大棗〉

タイソウ(ナツメ)

ナツメです。生薬名は「大棗(タイソウ)」。これも有名すぎる生薬ですね。薬膳を勉強していない人にもよく知られているのでは。中国には「1日3粒(7粒説もあり)の大棗は医者いらず」ということわざがあります。女性には特に効果的なので、妊娠や出産のお祝いになつめを贈るそうです。「気」「血」を両方増やすとされ、胃腸の働きを高めます。

初めて見た生ナツメの実がとても可愛らしいので、一粒食べさせてもらいました!大きさはウズラの卵ぐらいの大きさ。青いものがおいしいと言われましたが、赤いものを食べてみると、あら、思っていたよりもスカスカ…。皮が硬めなのがナツメの特徴ですが、生で食べてもその印象はあまり変わりませんでした。ジューシー感のない、リンゴのような。ほんのりした甘さがありました。

生ナツメを家で食べられたらいいなあと、我が家にもナツメの木を植えたくなった私。調べてみたら、けっこうな大木になりそう。我が家にはそんな大木を植えるスペースがない!とあっけなく夢散る…。

ヨモギ〈艾葉〉

ヨモギ

ヨモギです。生薬名は艾葉(ガイヨウ)。ヨモギもその辺に生えている草ですが、立派な薬草。葉は薬用として腹痛、吐瀉、止血に用いられます。生の葉のしぼり汁を切り傷につけるだけでも、止血効果があります。ちなみに葉の裏の白い腺毛は、お灸の「もぐさ」になります。

ニガヨモギ

ニガヨモギ

ヨーロッパから南シベリアに自生するニガヨモギは、薬草系リキュール「アブサン」の原料。アルコール度数が強いお酒です。ちなみに日本のヨモギでもアブサンが作れるそうで、クラウドファンディングで「和ブサン」として商品化されているそうです。機会があればぜひ飲んでみたい!

レモングラス

レモングラス

こちらはレモングラス。タイ料理で特におなじみ。茎や葉はトムヤムクンの材料になります。レモンのような強い香りがあり、最近は虫除けスプレーなどにも使われていますね。レモンの香りがする植物は、レモン以外にも割とたくさんあるんだそうです。中医学の古典には載っていないものの、理気(気をめぐらせる)の働きがあると考えられます。

ハトムギ〈薏苡仁〉

ハトムギ

ハトムギです。生薬名は薏苡仁(よくいにん)。胃腸の働きを高めてむくみなど余分な水分を排出するとされます。イボ取りなどでも有名ですね。種子は栄養価が高く食用にされます。調理実習の際も、煎ったハトムギをいただきましたが、香ばしくておやつ代わりにポリポリ食べたいおいしさでした!

ジュズダマ

ジュズダマ

ハトムギの隣に植えられていたのが、ジュズダマです。ハトムギとそっくり!実は、ハトムギの野生種がジュズダマなんだそうです。「あ、これ、昔その辺に生えていたやつや!」「この実をお手玉にしたわよね」と声が上がります。私も、ネックレスにしたりして小さい頃遊んだ覚えが!(自然に囲まれて育ったので…)

ハトムギとジュズダマ、触ってみると実のやわらかさが全然違います。ジュズダマはとてもかたくて、ハトムギはやわらか。やわらかい実が大好きなハトが食べに来ていました。

エビスグサ〈決明子〉

エビスグサ

エビスグサ。生薬名は決明子(ケツメイシ)で、この細長いさやの中に入っているものを、頭痛、めまい、目の充血や目の疲れの改善に使います。

種を煎じたものは、おなじみハブ茶になります。ハブ茶のハブは、蛇のこと。沖縄のハブではなく、マムシです。ケツメイシは整腸、便通にも効果があるので、マムシに噛まれた時に下剤として使ったのでこの名がついたのではと教えていただきました。

キョウオウ〈姜黄〉ウコン〈鬱金〉

ウコンと書いていますが中国でいうキョウオウ

キョウオウと書いていますが中国でいうウコン

鬱金(ウコン)と姜黄(キョウオウ)です。酒飲みの方ならお世話になっているに違いない生薬(笑)。この二つ、見分けがつかないくらいそっくり!生薬としても混同しやすいので、薬膳を勉強していると、鬱金と姜黄の違いに悩まされます。(さらにもう一種そっくりなガジュツというやつもあります)

鬱金は、初秋に花が咲くので秋ウコン。姜黄は、春に花が咲くので春ウコンとも呼ばれます。ただし、中国ではこれが逆で、秋ウコンが姜黄、春ウコンが鬱金です。えーー!なんてややこしい。

中医学を勉強しているので、ここから中国基準でいきます。
「姜黄=秋ウコン=ターメリック」です。カレー粉にはターメリックが含まれますが、黄色はターメリックの黄色色素クルクミンです。

黄色色素はクルクミン

生薬名姜黄(キョウオウ)鬱金(ウコン)
別名ターメリック春ウコン
効用健胃、鎮痛、止血止血、理胆
性味・帰経・辛/肝、脾・辛・苦/肝、心、胆

成分も違いますが、姜黄は温性鬱金は寒性。肝機能の強化に効果があるクルクミンは、鬱金より姜黄に多く含まれています。

マオウ〈麻黄〉

麻黄

「麻黄(まおう)」です。神農本草経にも載っている、中薬120種のひとつ。葛根湯や麻黄湯などに入っている重要な生薬で、咳を鎮めたり、発汗させたりといった効果があります。麻黄に含まれるエフェドリンという薬効成分は交感神経を刺激する作用のある強い薬。オリンピックのドーピング検査で引っかかることもあるぐらいだそうです。

重要な生薬ですが麻黄は中国でしか栽培されておらず、いずれ絶滅するのではといわれています。雨が多く降るところはあまり育たないので、栽培が難しいそう。日本で使われている漢方薬原料の80%以上を中国に依存していることを考えると、国内自給率は考えないといけない問題ですね。

クソニンジン

クソニンジン

最後に、クソニンジンです。すごい名前の植物ですが、実はこれ、マラリアの抗ウイルス薬の元。

昔からマラリアの特効薬といえばキニーネでしたが、耐性ウイルスの出現で他の薬が求められていました。そこで研究が進められた結果、クソニンジンの葉からアルテミシニンという物質がマラリアに効くとわかり、発見者のYouyou Tu先生は2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
(ただ、このアルテミシニンに一部耐性があるウイルスも発見されているとか…)

中国では昔からヨモギ属の植物が解熱剤として使われていたことがヒントになったそう。伝統的中医学が発見の元になったんですね。またアルテミシニンは抗がん作用もあることが研究でわかっているそうです。

まとめ

漢方薬となる薬草、薬は本当にたくさんの種類がありますよね。本で読んだり写真を見ても、なかなか覚えられなかったので、薬草園で生の状態で見たりさわったり匂いを嗅いだりすることで、リアルな実感がありました!「勉強してるけど、漢方が覚えられない!」という人はぜひ薬草園へ行ってみることをおすすめします。

人間は何万年も前から植物を薬に利用してきたんだな、医薬品を作るようになってまだ100年ちょっとしか経ってないんだなということもわかり、天然の薬物の偉大さを感じることができた1日でした。

KYO
影響を受けて、うちでも簡単な薬草を庭に植えてみたい!と画策中です。笑




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