【インタビュー】「薬膳を仕事にする人を増やす」それが使命– つばめ薬膳アカデミー主宰 渡辺真里子さん【後編】

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  • つばめ薬膳アカデミー主宰
  • 渡辺真里子さん
  • 国際薬膳師、国際中医師、本草薬膳学院認定講師、中級評茶員、日本国際薬膳師会理事。薬日本堂漢方スクール、本草薬膳学院の講師を務めながら、薬膳のプロを養成する「つばめ薬膳アカデミー」を2018年にスタート。薬膳の基本知識を身につけ資格を取得した人が、さらに知識を深めスキルを高めたいと訪れる教室です。
  • 公式サイト⇒https://tsubameyakuzen.com/


薬膳の知識を生かして活動や仕事をする人にインタビューする「薬膳と生きる人」シリーズ。今回は、薬膳講師&薬膳コンサルタントで、私の恩師でもある渡辺真里子さんにお話をうかがいました。前編では講師業についてでしたが、今回の後編では薬膳を仕事にすることについて、とても興味深い内容になっています。

つばめ薬膳アカデミーはプロのための教室

◆薬日本堂漢方スクールや本草薬膳学院で薬膳講師をしながら、ご自身の教室「つばめ薬膳アカデミー」を立ち上げられたんですよね。

「つばめ薬膳アカデミー」は2018年5月に立ち上げました。私が提供しているセミナーは、初心者向けではなく、薬膳資格を取得した方に向けて行っています。初心者の方が来られた時は「資格を取るにはこういう学校があるから」とお伝えして、資格を取った後に来ていただいています。

◆初心者ではなく、あえて薬膳の資格を取った人がプロとして独り立ちするためのサポート行っていらっしゃる理由は何でしょうか?

「薬膳の資格を取った後に勉強するところが少ない」と感じたことが理由です。薬膳の資格って、1,2年で取れてしまうところが多いけれど、薬膳の勉強が面白くなるのはそこからですよね。人に教えていると出てくる疑問もある。でも学ぶところがなかったら、その疑問は解決されないままですよね。だから資格を取った後に勉強する場所が私も必要だったし、その場所を提供したいと思ったんです。

◆生徒さんは、薬膳を仕事にしたい方がほとんどですか?

つばめ薬膳アカデミーの活動自体、「薬膳を仕事にする人を増やしたい」という思いでやっているので、薬膳で活動したいという方が来られます。

私が薬膳に関わろうと腹を括ったのは、薬膳を普及させたかったからなんですよね。一般的に「ヨガ講師」と言えば人に伝わるけれど、「薬膳講師」と言ってもなかなか伝わらない。薬膳講師がもっと当たり前に認知されてほしい。そのために薬膳で仕事する人を世の中にたくさん送り出すのが私の使命だと思っています。

◆具体的に、どういった思いで来られる方が多いんですか?

資格を取ったけれどまだ学びたい、ここまで勉強したからには何か薬膳の活動がしたい、でも何をしたいのかはボンヤリしている、という方が多いですね。そこで「無料オンライン進路相談」を行っています。「薬膳のお仕事マトリックス」を使って、何をやってみたい?というお話から始めます。

つばめ薬膳アカデミーHPより

マトリックスをお見せすると「レシピ提供なんてお仕事もあるんですか!?」と驚かれたりもします。薬膳の仕事といえば、おうち薬膳教室を開く、カルチャーセンターで教える、あとは飲食店で薬膳料理を出すぐらいだと思っている方もいるので。

◆マトリックスを見ると、カウンセリングなどもあるんですね。薬膳での相談や管理栄養士的なお仕事があればいいのになと思います。

「薬膳は日々の健康に役立つ」と一般の人にも理解してもらいたいから、管理栄養士さんのように薬膳で食事指導をするような職業の実現は一つの夢です。なかなか難しいことですが。

先日入院して手術したんですが、出血のせいで貧血になったんですよ。中医学で貧血は血虚の一部ですよね。ちょうど食事に、血を養うにんじんのきんぴらが出てきて「やった!」と思ったら、そこに鷹の爪が入っていて。「あかん、これ食べられへん」と思って泣く泣く残したんですよ。薬膳的には鷹の爪を入れないで欲しかったなと(笑)。
※辛熱性の食薬は熱と辛味の発散性によって血の消耗を促すため、血虚には禁忌となります。

薬膳を一般に浸透させたい、だから伝え手を増やす

◆薬膳って栄養学よりも考え方は簡単だと思いますし、もっと広がればいいですよね。

栄養学も素晴らしいしすごく重要な学問だけれども、栄養学で補いきれない何かが薬膳にあると思っていて、それが薬膳でいう「四気五味」の「四気」かなと。四気は「食材は『寒涼温熱』の性質を持っている」という、栄養学にはない物差しです。

私は寒がりだから温熱性かなあとか、暑がりだから寒涼性かなあとか、そういう物差しから食材を選べるのって実はすごく便利なことですよね。そこに気づいてくれる人が増えたら、薬膳に入っていきやすいんじゃないかなと。

だからこそ、薬膳の考え方を一般に広めたいんです。薬膳の知識を活かした食事のとり方や、体調の捉え方って日常に使えたらいいじゃないですか。そのためにも薬膳の伝え手としての職業がもっと認知されるべきだと思うんです。

◆薬膳に関する職業はまだまだ限られているような気がします。

これからの課題だと思います。お手本が少ないですよね。だからみんな「資格取りました!次、どうするの?」という悩みになっている。今は薬膳の活動を一般的にどんどん広げていく段階なんじゃないかなあと思います。

◆薬膳が認知されるには時間がかかるでしょうか。

でもね、最近気づいたのが「養生」という言葉が普通に通じるようになってきたな、と。「養生」って少し前までは病中病後や高齢の方のための言葉だったけど、今は本のタイトルにもなるなど広がってきていますよね。それだけ中医学や養生を発信する人が増えてきた効果かなと思っています。

「100匹目の猿現象」って知ってます?猿山のある1匹の猿が、芋を洗って食べることを覚えたら、また別の猿がそれを真似した。ある一定の猿が真似するようになったら群全体にも広がった。そうしたら、別の猿山でも同じように芋を洗うようになったという話なんですけどね。今は薬膳で「100匹目の猿」を作っている最中じゃないかなあ?と思っています。

薬膳を仕事にしたい人のための起業塾

◆つばめ薬膳アカデミーではいくつかのコースがありますが、「薬膳を仕事にしたい人のための起業塾」はどういった思いで始められたんでしょうか?

薬膳分野での仕事は未知なる可能性があるからこそ、一緒に薬膳活動の形を考えてみませんか?という思いが起業塾のきっかけです。

【薬膳を仕事にしよう】新ワークショップ「起業塾」についてお話ししました。

薬膳を学んだ人全員が講師やおうち教室をしたいわけじゃない。でもうちに来てくださる方はみなさん「薬膳を伝えたい」という思いは共通しているんです。じゃあその思いをどう実現するのかという部分をサポートしています。

◆起業塾に関しては、薬膳自体は一切教えないんですよね?

はい。起業塾なので、薬膳そのものは教えません。基本はオンライン※で、ワークシートをお渡しして取り組んでもらいます。どんな人を対象にし、どんな商品やサービスを提供するのか、どんなスケジュールで動くのかひとつひとつ確認しながら発表をして、お互いに評価しあったり、私からアドバイスさせてもらっています。※一部対面でも実施

まずは自分の思い資産(魅力・スキル・経験)をまとめてもらいます。薬膳の活動をする上で一番大切なのに、できていないのが「思い」「資産」の確認なんです。

◆思いの確認ですか?

みんな「薬膳の知識を身につけたら活動できるだろう」と思っている節があるんですけど、実はそうじゃない。薬膳で起業するには「思いがあってこそ」だよと。管理栄養士のように国から仕事が担保されているわけでもないから、自分で仕事を作っていかないといけないんです。でも、どこの薬膳学校もそこまでは教えてくれない。

結局「思い」の部分がどういう活動をするかに関わってくるので、「思い」や「資産」を確認することがすごく大事で、起業塾ではそういったところを重点的にお伝えしています。受講生さんはそれがよかったとおっしゃってくださいます。

◆先生のところでは、薬膳に関わりたいけれど、料理教室はしたくないという人が多いんでしょうか?

料理教室ではなく、カウンセリングがしたい人、講師になりたい人が多いですね。結局、私が薬膳料理は教えずに講師をしていることを嗅ぎつけて、みなさん来くてくださるんだと思うんですよ。生徒さん自身が先生を選んで来てくださっているというか。

◆薬膳のコンサルをしながら、先生自身が新しい薬膳起業モデルになってらっしゃるということですよね。

そう言ってもらえるのはうれしいです。マーケティングに関わっていたからこそ、その人らしさを引き出すコンサル的なアドバイスもできますし、薬膳料理を教えない薬膳講師の形も実現したし、資格迷子になっている人を何人も見てきたからこそ起業塾をやろうと思ったし。薬膳で起業する新しいロールモデルとして、皆さんに背中を見せられたらいいなと思います。

◆最終的な目標はありますか?

「薬膳ビル」を建てたいですね。5階建ぐらいで、1階が薬膳カフェ、2階が鍼灸と漢方薬局、3階がセミナールームがあって薬膳が学べたり、勉強できる場所があったり…。

目的としてふたつあって、ひとつはそこが薬膳の活動拠点になって、薬膳を勉強した人が活動する場として機能すること。もうひとつは、一般の人が気軽に薬膳に触れられる「薬膳のテーマパーク」として、薬膳が広がるきっかけになればいいなと、そんな風に思っています。

◆最後に、先生が考える「薬膳の上達」とは何でしょうか?

薬膳の上達といってもいろいろありますが、要は「薬膳を食べて実感してみること」じゃないでしょうか。

以前、本草薬膳学院の「季節の薬膳」という本で夏のレシピを担当したんですが、レシピを作ったのが真冬だったんですよ。真冬に真夏のレシピを試作して食べたら、もう寒くて寒くて、風邪をひきそうになってしまって(笑)。でもそれだけ効果のあるものが作れたと実感しました。それもあって、薬膳の上達は「食べて効果を感じる」のがポイントじゃないかなあと思っています。

ありがとうございました。


現在は薬日本堂、本草薬膳学院の講師を離れられ、つばめ薬膳アカデミー主宰として活動する渡辺先生。今回ご紹介した起業塾のほか、薬膳のプロとしてスキルを磨くためのセミナーをたくさん企画してらっしゃいます。興味のある方はぜひHPをご覧になってください。


↓おまけの質問
◆お気に入りの漢方薬・薬膳メニューは?

ふつうの家庭メニューなのに実は薬膳だよと教えてもらったのが「トマトと卵の炒め物」。食欲増進の効能があります。夏バテの時にそれを食べてたら大丈夫だったという経験がある一品です。

↓渡辺先生自ら手がけられている薬膳茶。受講生さんに人気だそうです。こちらもぜひどうぞ。

薬膳茶のショップはこちらから


  1. つばめ薬膳アカデミー 渡辺真里子さん
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